観覧注意*素人の創作文掲載中


エンジェル

2015年02月13日 15:22

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・序章-六 (過去文-2013作成)




いつもよりいくらか早くマンションに帰宅出来たその日。

小太郎を早朝、保育園に送ってから大学へ行く生活にも大分慣れつつある。くたくたになった私をまだ寝ずに待っていたらしい小太郎を玄関先で抱き上げ、教科書やらが入ったバッグを一旦玄関に置き去りにしてリビングのソファで、私は脱力した。入園式以来、小太郎を外で抱き上げるのは控えているが、まだ子離れからは程遠い私の甘えもあって家でのその規制はすっかり除外されていた。どうやら今日は父が保育園へ迎えに来たらしい。そんな話を言葉少なに得意げな様子で話す小太郎に耳を傾けながら、ソファに座る私の腿に跨り対面した状態で体を上下左右に揺らす小太郎にも、私は甘い態度で接していた。そしてその一方、私は内心、しっかりした父の影響の色濃い息子に複雑な心境になりながらも、至って客観的に、やっぱり父親は必要だよな。なんてことを考えるのが通常運転の私だった。

まだまだ気持ちの若い両親二人はすっかり私の子育てに協力的である。専業

主婦の母は勿論、父もよく小太郎を保育園に迎えに行ってくれたり遊びに誘ったりしてくれる。流石に毎日のように此処へ泊っていくことはなくなったものの、平日の母はよく八時前後まで此処に残り小太郎の相手をしてくれていた。お蔭で小太郎は、家に数時間一人でお留守番ということはあっても、食事などは母といつも一緒だ。仕事が早く終わった日は父も世話してくれるので、二人にはとても感謝している。

小太郎も、孤児院に居た時から二人には懐いていた。けどこうして一番私に懐いて慕ってくれているのだから、私は本当に身内に恵まれてると思う。

「一緒に、お風呂入りたい」

「もうお祖母ちゃんと入ったんじゃないの?」

母が冷蔵庫に入れておいてくれた食事を食べ終え、手を合わせたところで小太郎が私の後ろから首に腕を回してきた。ソファの上から、床に正座する私の頭を派外詰めにするような形。私が夕食を一人でとっている間はちゃんと大人しくしていた我が子だ。多分この調子だと、私がベッドに入るまで私のそばをついて回る気でいるのだろう。

姿勢だけの逡巡。

私は「お皿洗ってからね」と言って、諦め交じりでキッチンへ向かった。食器を洗っている間もまだかまだかと、足元に座り込んで私に構ってもらう機会を待つ小太郎。この調子では、「先に寝ていなさい」なんて、大人な対応をとる私の姿はまだまだ先の話に思えた。厳粛な父だって、この天使のお願いには甘い顔をせずにはいられない。それに誰に似たのか小太郎も小太郎で、したたかな様子を見せながらも案外我儘なのだから仕方がない。

小太郎が追い炊きしてくれた湯船に、二人で浸かる。珍しく言いつけを聞かず、体を洗わずに湯船に直行した小太郎だったが、既に母と入っているようだから今回は見逃すことにした。小太郎にもちゃんとその辺の認識はある。潔癖とまではいかないものの、そんな私のもとで育った小太郎は掃除も丁寧だし遊具の後片付も自分からやる利口さと自立面を既に持ってくれている。

黄色いアヒルの玩具を水面に浮かべ、今日保育園であったことや誰と遊んだなんて他愛のない小太郎の話に和む。例の、女の子二人とは今も仲良くしているらしい。明日の休日は何をしようかと相談した後お風呂を上がった頃には、もう十一時を過ぎていた。

「お母さん、大好き」

夜更かしさせ過ぎてしまったと思いながらも、当の本人はこの調子。いつも通りシングルサイズのベッドに入った私は、天使のように愛らしく小さな我が子を胸に抱きながら暫く子守唄を優しく歌い続けた。


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