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エンジェル-悪夢

2015年02月13日 16:05

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・序章-壱拾六 (過去文-2013作成)





身体には、久々の体温が感じ取れるような気がしていた。

私のものではない、他者の体の熱。子供独特の、健康的な高い体温。

ああ、小太郎が戻ってきたのだ。

まだ微睡の強い意識の中、私はそう思い込んで手探りにすぐ傍に寄る熱い体に腕を回した。目尻を温い水滴が伝っていく。小太郎、小太郎、私の可愛い天使。

やっと、見つける事が出来た―――。

眼裏で小太郎が嬉しそうに笑っている。愛おしい私の息子。まだ小さなあの子は、シングルベッドでも十分私と一緒に寝転がることが出来るサイズ。でも私の胸にしがみ付いて眠るのを好むその体は、まるでスペースなんて必要としていなかった。私も私で、すっかり小太郎は抱き枕状態。それがないと眠れないくらい、もう何度も何度も抱きしめて、そしてその存在に幾度も感謝した。

始めはたった一人のただの赤ん坊。けどその存在にどれだけ救われ、元気づけられ、一緒に過ごす日々の中で、新たな気持ちを貰ったことか。

私は最初から、あの子に魅せられ、引き付けられていた。

それが同情から生まれたものであったにせよ、私の心の寂しさが求めた者であったにせよ。確かにあの子は、私の心を掴み離さずにいてくれた。

親子になった後も、ずっとずっと。

それが例え、血の繋がりのない仮初の母と子の間で交わされたものであると分かっていても――――

これだけ私を惹きつけ、心底から愛を絶えず溢れさせるのは、きっとこの先どれだけの出会いがあっても、あなたひとりだけ。

「ひより・・・」

呼ばれて、私は心地いい温もりに身を委ねたまま、ゆっくりと瞳を開いた。

耳元で囁かれる声は吐息の音。耳たぶを唇と優しげな息が掠めてくすぐったい。

こら、お母さんと呼ばなきゃ駄目でしょ?母親がとっても偉大だっていう絵本を読んであげたの、忘れたの?ならまた、ちゃんと眠るときに読んであげるからしっかり覚えようね。

そんな説教染みた言葉が懐かしくも頭を過って、私は思わず頬を緩める。

小太郎は間違っても、母親である私のことを呼び捨てにしたりしないのに。変なの。

「小太郎?」

私は酷くすっきりしている頭に気をよくしながら優しく呟くように呼んだ。寝起きで掠れた声。小太郎は私のこの声をとても気に入ってくれていた。

「ひより・・・ああ、俺の――日和」

―――――え。

途端に私は、はっきりと意識を吹き返した。昨晩の出来事が濁流のように濃い色と密度を以て押し寄せる。体がぴしりと、硬直した。視線が正面に縫いとめられ、半ば本気で夢であってくれと願う。

嘘、でしょう・・・。

覚醒を得た五感が一瞬の内にけたたましい警鐘を響かせた。不快な耳鳴りに意識が何層にもなった薄い膜に覆われる。緊張に足の爪先までもピンと突っ張った。

意識したのは足に絡まる、何か。

全身に感じる自分以外の体温。

腰と背中に受けえいるのは太い荒縄のように固く強く、締め付ける力―――

目に捉えてしまった人の肌の質感に、私は息を呑んだ。







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