観覧注意*素人の創作文掲載中


エンジェル

2015年02月13日 15:25

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・序章-七 (過去文-2013作成)




あれは、不可思議に現れたこの子を近くの交番へ連れて行ったときの事。


私は妙に大人しい赤ん坊の抱き方を決め兼ね、どう見てもまだ首の座っていない様子にいろんな意味合いでドキドキしっぱなしだった。


あまり私を疑った様子無く、事務的な職務質問を向けてくる警官を前にパイプ椅子に寄りかかって赤ちゃんのお腹のあたりをなでる。


本当に妙なくらい、大人しい子で戸惑っていた。


「この赤ちゃん、髪も目も赤色なんて珍しいですよね。偽物ってわけでもなさそうですし・・・、髪はともかく、赤い虹彩の人種ってご存知ですか?」


大体の質問は終わった。


という警官の雰囲気を読み取って、私はふとそう尋ねてみたのだ。


見下ろす瞳は赤く、蛍光灯に照らされればその色の鮮やかさに気づけば赤ん坊相手だと分かっていても、思わずぞっとせずにはいられなかった。


よくわからない、今まで感じたことのない鮮麗と表現したくなるような、無垢なものの持つ威圧感。


曲がりなりにも、私は民族的な文化やその文献を読み漁るのが趣味というくらいだ。


人種ごとに見られる顕著な体の特徴なんて、一番視覚的にわかりやすいもの。


赤い虹彩を持つ人種なんて知ったら私なら真っ先に調べそうなのに、'赤い瞳'なんて比喩的表現で使われる例しか知らない。


他に関連して思い浮かぶものと言ったら、実験用によく使われる白いマウスの赤い眼球だけれど、この赤ん坊のそれから受ける印象はもっと色の度数が濃い、というか。


・・・兎に角、人のパーツの一つとして成り立つには違和感と異質さが強すぎるように思えたのだ。


「・・・赤?こちらには、どちらも黒色に見えますがね」


「・・えっ?」


そしてその時初めて、その子の異質さに、隠しようのない何かを垣間見る。


私の目には誰の目から見ても明らかな色。


人によっては、赤や緑といった色の認識が困難な人もいるというけれど、少なくともそう言った人たちが識別する誤色は黒じゃない。


私の目が、まさかおかしいのだろうかと一瞬疑うもそんな違和感は嘗て身に覚えになかった。


「そう言えば、目や髪はまあ有り勝ちですが目鼻立ちもそれとなくそちらの特徴と似ている気がしますね」


思わず唖然として警官を凝視してしまったその時だけ私は不審な目を向けられ。念のために後日DNA検査をするよう、言われたのだった。



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